聖女天使を苦しめた国に、天罰を
(それが恐ろしいと、感じていたはずなのに――今は、怖くない……)

 それがなぜなのかは気づけぬまま、セロンは悲しそうに目を伏せながら素直な気持ちを吐露した。

「わたしが、ペガサス……。言い聞かせておけば……。怪我、しないで……済んだ……」
「聖なる力の使用は、身体に負荷がかかると聞くが」
「たくさん使わなきゃ、平気。だから、やらせて」

 彼は渋々重い足を動かすと、土の上に倒れ伏し痛みを堪える侍女の元へ向かった。

「触るか」
「ん……」
「わかった」

 その場にしゃがみ込んだ辺境伯は少女を落とさないように、しっかりと支える。
 セロンは彼の胸元から手を伸ばすと、ルセメルの肩に指を触れて祝詞を紡ぐ。

「フォルツァ・コンソラーレ。天使の祝福を、あなたに」

 銀色の風がどこから吹き荒び、侍女の身体を包み込む。
 セロンが指先を離せば、呻き声を上げて必死に痛みを抑えていたはずのルセメルはすくりと立ち上がる。
 その後、普段通りの明るい声で天使に告げた。
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