聖女天使を苦しめた国に、天罰を
 ――神は戯れに、目麗しい人間の娘へ聖なる加護を授けた。
 彼は目をかけた少女を愛し子と呼び、慈しんだ。
 しかし――。

 ルユメール王国の王族は彼女達を聖女天使と呼び、神殿に集めて厳重に管理した。

 表向きは、内紛を防ぐためとされていたが……。
 性根の腐っている人間達は、彼女達を奴隷のように扱った。

『傷を癒やすだけしか、取り柄がないくせに!』

 ある時は、過労死寸前まで傷を癒やせと強要し――。

『誰のおかげで生きられると、思っているんだ!』

 またある時は、ストレス発散の道具として、扱った。

『もう、止めてください……』

 牢獄に捕られた聖女天使達は毎日のように、助けを求めて泣き叫ぶ。
 しかしその願いがかなえられることはなく――彼女達は神の思惑とは真逆の人生を送り、命を終えた。

 ――神は度重なる失敗の末、ただ力を与えただけではその特別な力を披露した瞬間、人間に搾取されて悲しい人生を送るだけだと気づく。

 彼は自由自在に背中へ純白の翼を生やす能力を彼女達に授けた。

『嫌なことがあればいつでも、天界へ飛んで来られるように』

 そんな願いを込めて与えられた新たな力すらも――人間にとっては、愛し子達を迫害する理由にしかならない。
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