聖女天使を苦しめた国に、天罰を
4・それぞれの思惑
パロニード辺境伯の拠点となる領城の執務室に連れ戻されたセロンは、再びここで暮らすようになった。

(クロディオのことは、まだ……。ちょっと、苦手……。でも……)

 ――天使は信じたかった。
 彼の腕の中に抱きしめられた時、心地いいと感じた自分の感情を。

『どうしてセロンは、人間なんかに頼るんだ? 誰だって、同じだよ。心の奥底には、一物かかえ込んでいる。この男だって、きっとそうに違いない』

 クロディオに心を許し始めていると知ったペガサスは、それに納得ができないようだ。
 どうにか彼を嫌いになってもらえないだろうかと、言葉を重ねる。

「決めつけは、よくない」
『ボクは事実を述べたまでさ』
「ベガサス……」
『彼はここに君を連れてきてから、一切セロンを気にする様子がない』
「それは、お仕事だからで……」
『こんな奴と一緒にいたって、なんのメリットもないよ。ボクと一緒に、天界へ行こう!』

 床の上に座って静かにペガサスと会話を試みていたセロンの首元を引っ掴んで勢いよく振り上げた神馬は、背中に少女を乗せて上空へと羽ばたく。

「ま、待って……」

 か細い声を上げた天使はすぐさま背中に翼を生やし、空中へと浮かび上がって天界行きを拒絶した。
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