甘えたがりのランチタイム
「なんかそれ、わかる気がするな」
「本当?」
「うん、好きなことをしてる時って、自分だけの世界観があるんだよね。元々水族館が好きじゃない人にそれを押し付けるつもりはないけど、無理に合わせてほしい気もしなくて」
風見くんはすごく優しい人なんだろうなぁ……だからさっきも怒鳴ったりせずに、静かに想いを伝えていたのだろう。
「彼女……いや、元彼女はクラゲが好きって言ってたから、てっきり水族館も好きなのかなぁって思ってデートに誘ったんだけど、好きなのはクラゲのフォルムだけだったみたい。実物を見て『キレイ』って言ったきり、他の生き物はあまり見てなくて。『歩き疲れたから休憩しよう』ってカフェに入って、そのまま帰るパターンが多かったんだ」
彼女の話題が出たが、話を聞いてあげた方がいいのか、放っておくべきなのか困惑した。しかし茉莉花の中で答えが出なかったため、特に何も言わずに、彼が出たら時に話を聞こうと決意する。
「クラゲは女性人気が高いから、なんかわかるかも」
「俺、同じように水族館が大好きっていう人と行ったことがないんだ。西園さんとなら行ってみたいなって思ったけど、きっと彼氏さんがいい気持ちはしないよね」
それはどうだろうーー案外、自分は行かなくていいからと笑顔で送り出すかもしれない。
豚汁を作っていた鍋に味噌を入れて完成させると、ちょうど電子レンジから出来上がりを知らせる音がしたので、扉を開けて中から付け合わせ用に作った、ほうれん草のキッシュを取り出した。
「それ、俺がやるね」
「あっ、ありがとう……」
皿に肉を盛り付けていた裕翔がキッシュを受け取り、肉の隣にササっと添えた。料理教室以外でこんなふうに一緒に作業が出来るなんて、正樹が相手では考えられないことだった。
タイミングよくご飯が炊け、テーブルの上には豪華なディナーが温かな香りと共に並べられた。
鼻を掠める美味しそうな匂いに、つい頬が緩む。いつもなら時間ばかり気にしてしまうが、誰かとお喋りをしながら時間を気にせず調理をしたのは、料理教室を除けば久しぶりのことだった。
それに誰かと一緒に作ったものは、食べる楽しみも与えてくれる。
汚れることを心配して貸してくれた裕翔のエプロンをはずすと、申し訳ないような気持ちとともに、嬉しくてどこかくすぐったい気分にもなった。
「本当?」
「うん、好きなことをしてる時って、自分だけの世界観があるんだよね。元々水族館が好きじゃない人にそれを押し付けるつもりはないけど、無理に合わせてほしい気もしなくて」
風見くんはすごく優しい人なんだろうなぁ……だからさっきも怒鳴ったりせずに、静かに想いを伝えていたのだろう。
「彼女……いや、元彼女はクラゲが好きって言ってたから、てっきり水族館も好きなのかなぁって思ってデートに誘ったんだけど、好きなのはクラゲのフォルムだけだったみたい。実物を見て『キレイ』って言ったきり、他の生き物はあまり見てなくて。『歩き疲れたから休憩しよう』ってカフェに入って、そのまま帰るパターンが多かったんだ」
彼女の話題が出たが、話を聞いてあげた方がいいのか、放っておくべきなのか困惑した。しかし茉莉花の中で答えが出なかったため、特に何も言わずに、彼が出たら時に話を聞こうと決意する。
「クラゲは女性人気が高いから、なんかわかるかも」
「俺、同じように水族館が大好きっていう人と行ったことがないんだ。西園さんとなら行ってみたいなって思ったけど、きっと彼氏さんがいい気持ちはしないよね」
それはどうだろうーー案外、自分は行かなくていいからと笑顔で送り出すかもしれない。
豚汁を作っていた鍋に味噌を入れて完成させると、ちょうど電子レンジから出来上がりを知らせる音がしたので、扉を開けて中から付け合わせ用に作った、ほうれん草のキッシュを取り出した。
「それ、俺がやるね」
「あっ、ありがとう……」
皿に肉を盛り付けていた裕翔がキッシュを受け取り、肉の隣にササっと添えた。料理教室以外でこんなふうに一緒に作業が出来るなんて、正樹が相手では考えられないことだった。
タイミングよくご飯が炊け、テーブルの上には豪華なディナーが温かな香りと共に並べられた。
鼻を掠める美味しそうな匂いに、つい頬が緩む。いつもなら時間ばかり気にしてしまうが、誰かとお喋りをしながら時間を気にせず調理をしたのは、料理教室を除けば久しぶりのことだった。
それに誰かと一緒に作ったものは、食べる楽しみも与えてくれる。
汚れることを心配して貸してくれた裕翔のエプロンをはずすと、申し訳ないような気持ちとともに、嬉しくてどこかくすぐったい気分にもなった。