甘えたがりのランチタイム
「そりゃ、私といるより、友だちといる方が楽しいよね……。料理しか出来ないし、趣味は水族館だし……」
「それは茉莉花の良いところだと思う。でも……俺とは違うっていうか……やっぱり同じ趣味があった方が、一緒にいて楽しいって思うようになってきたんだ。だから茉莉花のせいじゃないんだ。本当にごめん」
「それは……別れようってこと? 好きって気持ちも、正樹の中にはもうないの?」
「……ごめん。それに俺が恋人だと、いつか茉莉花が物足りなくなる日が来ると思う」
正樹の中では気持ちが固まり、もう茉莉花の元に帰ってくることはないとはっきりわかる。
茉莉花の中の"正樹が好き"という想いだけが置いてけぼりになり、彼の元へ届くことは二度とないのだと実感した。
よく見ると正樹の足元には大きなキャリーバッグ置いてある。ハッとして部屋を見渡した茉莉花の目から涙がこぼれ落ちた。
部屋の中にあったはずの正樹の私物がなくなり、彼がこの部屋から出て行こうとしていることを物語っていた。
「……荷物、まとめたんだね」
「うん、午後は休みをとってた」
「じゃあ朝にはもう出ていく気でいたんだ……全然わからなかった」
正樹は申し訳なさそうに頭を下げ、
「本当にごめん。今までありがとう」
と口にした。
それからキャリーバッグを持ち上げると、茉莉花のすぐ横を通り過ぎて玄関に向かう。だが茉莉花は振り返ることが出来なかった。
「じゃあ元気で」
正樹の声が聞こえたかと思うと、静かにドアが閉まる音が響き渡る。部屋にはエアコンの風が流れる音だけが残された。
勝手に上がり込んで、勝手にいなくなるなんて……本当に自分勝手な人ーーそれでもそんな彼のことが大好きだった。
茉莉花は涙が止まらなくなり、その場にへたへたと座り込んだ。
「それは茉莉花の良いところだと思う。でも……俺とは違うっていうか……やっぱり同じ趣味があった方が、一緒にいて楽しいって思うようになってきたんだ。だから茉莉花のせいじゃないんだ。本当にごめん」
「それは……別れようってこと? 好きって気持ちも、正樹の中にはもうないの?」
「……ごめん。それに俺が恋人だと、いつか茉莉花が物足りなくなる日が来ると思う」
正樹の中では気持ちが固まり、もう茉莉花の元に帰ってくることはないとはっきりわかる。
茉莉花の中の"正樹が好き"という想いだけが置いてけぼりになり、彼の元へ届くことは二度とないのだと実感した。
よく見ると正樹の足元には大きなキャリーバッグ置いてある。ハッとして部屋を見渡した茉莉花の目から涙がこぼれ落ちた。
部屋の中にあったはずの正樹の私物がなくなり、彼がこの部屋から出て行こうとしていることを物語っていた。
「……荷物、まとめたんだね」
「うん、午後は休みをとってた」
「じゃあ朝にはもう出ていく気でいたんだ……全然わからなかった」
正樹は申し訳なさそうに頭を下げ、
「本当にごめん。今までありがとう」
と口にした。
それからキャリーバッグを持ち上げると、茉莉花のすぐ横を通り過ぎて玄関に向かう。だが茉莉花は振り返ることが出来なかった。
「じゃあ元気で」
正樹の声が聞こえたかと思うと、静かにドアが閉まる音が響き渡る。部屋にはエアコンの風が流れる音だけが残された。
勝手に上がり込んで、勝手にいなくなるなんて……本当に自分勝手な人ーーそれでもそんな彼のことが大好きだった。
茉莉花は涙が止まらなくなり、その場にへたへたと座り込んだ。