甘えたがりのランチタイム
 二人のやり取りを見ていた聖司が、何かを察したかのように目を細めた。

「二人って、そんなに仲良かったっけ?」

 料理教室で会うようになって一カ月ほど。以前より確実に親しくなっていた二人だが、そのことを羽美以外の友人たちには話していなかった。

 もしかしたら彼は言って欲しくないかもしれないーーそう考えると、勝手に話してはいけない気がしたのだ。

 それは裕翔も同じだったようで、二人は見つめ合い、アイコンタクトを交わす。

『話していいかな?』
『うん、私はいいよ』

 そして頷くと、裕翔が口を開いた。

「実は俺、最近料理教室に通い始めたんだけど、偶然そこに西園さんも通っていてね」
「うん、それで話すようになったんだよね」
「たまたま行った場所で会うなんて、すごい偶然ねぇ」
「私たちもびっくりしたよね」
「本当にね。それにしても、本当に美味しいね、コレ。今度作り方を教えて欲しいな」

 波斗は茉莉花と裕翔を交互に見ると、クスッと笑う。

「今まで気付かなかったけど、二人ってなんだか雰囲気が似てるね」
「わかる。俺も同じこと思ってた」

 茉莉花と裕翔が顔を見合わせる。千佳子先生にも言われていた二人は、友人たちにも同じことを言われて思わず吹き出してしまった。

「やっぱり似てるのかな?」
「かもしれないね」
「んー⁉︎ なんか二人の空気感、意味深じゃない?」
「えっ、そ、そんなことないよ!」
「たまたま千佳子先生に同じことを言われたんだ。だからつい反応しちゃった」

 それを聞いた羽美は、納得したように頷いた。

「まぁ二人とも付き合ってる人がいるし、怪しいことはないか」
「当たり前じゃん。俺ら同期の中で、ずば抜けた真面目人間の二人だよ。絶対にないって断言出来る!」
「俺もそう思うな」

 茉莉花と裕翔が仲良くなったのは最近のこと。しかし共通の友人である聖司と波斗と羽美が、自分たちの共通点を見つけた気がして嬉しくなる。

 正樹のことが気がかりな中、茉莉花の心は久しぶりに満足感に包まれた。
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