知らない明日が来たとしても
 ふと暁の方に目を向けると、隣に座る女性と何か話しているようだった。
 中途採用で入った彼女には才佳に無い大人びた魅力があって、暁と並ぶとお似合いの二人に見える。

 そういえば暁の恋愛についてしばらく話を聞いていない。
 数年前に彼女が出来たと報告を受けたことがあったけれど、半年も経たずに別れたようだった。
 こちらから聞いても濁されることが多く、結局恋愛関係の話題といえば才佳が一方的に崇人の話をするだけで、向こうの話を聞くこともしなくなってしまった。
 暁は端正な顔立ちのせいか、社内でも女性人気が高い。
 さらさらとした癖のない黒髪に、形の良い切れ長の瞳と通った鼻筋。
 普段あまり意識はしていないけれど、才佳もたまにその容姿にはっとさせられ、羨ましいと思うこともあった。
 同僚や後輩に連絡先を渡してほしいと頼まれることもよくあったが、暁はまるでその気がないらしく、女性の影を感じたことはなかった。

 視線の先では暁が穏やかな表情を浮かべながら何かを話し、隣の女性が楽しそうに笑っている。
 もしも自分が知らないだけで暁に好きな人がいるのなら、彼がそうしてくれたように、祝福したいし応援したいと思う。
 いつか何かを話してくれる日を期待して口元を綻ばせた時、才佳の隣で大きな声が上がった。
 
 
「――ありえないでしょ、絶対!」

 
 随分と酔いが回ったらしい後輩の女子が力強くグラスをテーブルに置き、前に座るメンバーがまぁまぁとそれを窘めている。
 
 
「ちょっと、どうしたどうした?」
「えー才佳さん、話聞いてなかったんですか?」

 
 飛び散った中身を慌てておしぼりで拭きながら才佳が問うと、後輩は据わった目をしながら絡んでくる。
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