知らない明日が来たとしても
「やっと追いついた……」
追いかけてきたらしい暁が隣に並んでも、才佳はその家族から目が離せなかった。
視線を追うように、暁も前を見やる。
「え……あれって……」
隣から聞こえた絶句したような声に、我に返った才佳は咄嗟に暁の腕を掴むと、近くの路地裏へ彼を引き込んだ。
ばくばくと心臓が痛いほどに悲鳴を上げている。
向かい合う暁が信じられないという顔をしながら口を開いた。
「なぁ、さっきの小田原さんだったよな……?」
「……」
「……どういうことだよ。あの人、結婚してたのか?」
全部バレてしまった。もう言い逃れできない。
なんて残酷な偶然なのだろう。
崇人とその家族の姿は、写真の中で見るよりもずっと強烈に才佳の心を抉った。
同時に気付く。
崇人は月に一度才佳と会う以外は、こうしてたびたび都内に戻っては家族と過ごしていたのだ。
向こうの家に来ることだってあったのかもしれない。だからあの写真だって置いてあったのかもしれない。
何も特別じゃない。それが彼の日常だった。それくらい完璧で自然な家族の姿だった。
「……そうだよ。結婚してるんだって」
暁が深い息を吐く。
暴れそうな感情を制御するかのように、両手がきつく握り締められていた。
「……知ってたのかよ」
「この間、打ち明けられた」
「……それで、もちろん別れたんだよな」
「……別れてないよ」
「別れてないって……正気か?」
「……どうしたらいいのか、悩んでる」
「こんなの悩むことじゃない、付き合い続けられるわけないだろ!」
視線をそらし続ける才佳の両肩を暁の手が掴む。
苛立ちを隠せずに口調を荒げる彼を、才佳は今まで見たことがなかった。