知らない明日が来たとしても
「わかってる、わかってるけど――」
堪えるように目を瞑った後、真っ直ぐに暁を見上げて言った。
「すぐ嫌いになれるくらいなら、こんなに好きになってないよ……」
ようやく絞り出した声は、情けないくらい弱々しかった。
「暁が言ってることは全部正しい。だから私の気持ちはきっとわからない」
「才佳……」
「……もう放っておいてよ、これは私たちの問題だから。暁には関係ない」
暁は目を見開いた後、口をつぐんだ。
咄嗟に飛び出した突き放すような言葉。さすがにもう呆れてしまっただろうと思った。
その方がいいのかもしれない。これ以上自分のことで暁が振り回されて、疲弊する必要はない。
「……もう、戻ろっか。みんな心配してるかも」
切り替えるように明るい声色を作って路地裏から出ようとすると、両肩に置かれた手に力が込められたのが分かった。
驚いて暁を見つめると、彼は真剣な表情で呟いた。
「……放っておけるわけないだろ」
「……どうして」
「どうしてか、本当にわからない?」
壁に背中を押し付けられて、二人の距離が縮まる。
何かを耐えるような沈黙の後で、暁は才佳を見つめながら言った。
「好きだからだよ、才佳のことが。――出会った頃からずっと好きだった」
「――……え」
予想もしない言葉だった。
冗談か何かだと思ったものの、見上げた先にある切なげな表情の中に嘘は感じられない。
「そ、そんなこと急に言われても……暁のこと、そんな風に考えたことも……」
「……知ってる。もう俺じゃだめなんだって諦めてた。誰かが才佳のこと幸せにしてくれるなら、それでいいって思ってた。見守っていこうって」
暁の手が背中に移動したかと思うとそのまま引き寄せられ、抱き締められた。
「だから耐えられないんだよ……お前が傷付いて辛い思いしてるのは」
肩越しに囁きが聞こえ、回された腕にぐっと力がこもる。
暁の気持ちにどう答えていいのか分からなかった。
けれどこうして触れられても、嫌悪感はまるでなかった。
ずっと前から知っているかのように、伝わってくる体温が心地良い。
無意識に暁の背中に回しかけた手を、才佳は触れる直前で下ろす。