知らない明日が来たとしても
「邪魔したよね。俺もう行くから」
「あ、ちょっと待って!」
引き留める声に、暁は浮かしかけた腰を再び椅子に下ろした。
「あの、思ったまま話すから偉そうだったら申し訳ないんだけど」
うまく伝えられるか分からない不安を一度呼吸で落ち着かせてから、才佳は口を開いた。
「やりたいことが無いって、そんなに悪いことじゃないって私は思う」
暁の真っ直ぐな視線を感じて、じわじわと全身に緊張が帯びてくる。
ああ、そうだ、と才佳は思い出す。
ついさっき暁が才佳も凄い人に見えると言ってくれたけれど、全然そんなことはない。
人前で自分の意見を話すことが大の苦手だし、就活の面接だっていちいち声が震えて散々だった。
それでもこの会社の人事や役員は、伝えようとする姿勢が大事だと言ってくれた。
暁がどう受け止めるかは分からないけれど、少しでも暗い気持ちを紛らわせることが出来ればと思う。
「逆に言うと、これからやりたいこと何でも探せるってことなんじゃないかな。どういう未来を作っていくか、可能性がたくさんあって選び放題というか」
「……」
「……あっ、あと!」
ぱっと思い浮かんだ考えに、才佳は思わず前のめりになった。
「ここの人事部長ってすごい鋭いから、たまたま運よく入れただけとかは絶対ないと思う!
ちゃんと早川くんのことを見て、この人に来てほしいって思ったから採用したんだよ。
早川くんはここにいるべき人で、きっと運命だったんだよ!」
そこまで言い切ってから慌てて才佳は体を元に戻した。
完全に語り過ぎた。一気に顔に熱が集中してきて、いたたまれずに両手で顔を覆う。
「ごめん、熱くなり過ぎちゃった……引いたよね」
指の隙間からそっと暁の様子を伺うと、才佳の熱量に驚いたのか目を丸く見開いていた。