知らない明日が来たとしても
「ママもこまったよねぇ。まいごになっちゃったんだね」
自分ではなく母親が迷子だと思い込んでいるらしく、不満げに足をぶらぶらさせている。
「ママ、だいじょうぶかな。泣いてないかな」
足先を眺めながら小さく呟く姿に、元気そうに見えて実は心細いのかもしれないと思った。
何か子供の気が紛れそうなものがないかと思い、持ってきたトートバッグを開いた時、持ち手に付けていたキーホルダーに気が付いた。
ボールチェーンの下に、丸々とした白い柴犬の小さなぬいぐるみが付いている。
それを外して女の子に手渡した。
「これ、えまちゃんにあげる」
「え! わんちゃんだ! かわいい!!」
「コロちゃんっていうんだよ」
ココロ飲料のマスコットキャラクター、”コロちゃん”。
小さいけれど、ふわふわとした素材で手触りが良い。
販促用に作ったグッズで余ったものを付けていただけだったけれど、喜んでくれそうなものを持っていて良かったと内心ほっとする。
「コロちゃんはわんちゃんだから、人を探すのが得意なの。だからママもすぐに連れてきてくれるよ」
「そうなの? もらってもいいの?」
「うん、いいよ」
「ありがとう!」
そう言って満面の笑みで受け取ると、優しい手付きでコロちゃんの頭を何度も撫でた。
その姿を見ていると、この子も同じように周りから大事に育てられているのだろうなということが伝わってくる。
「コロちゃん、早くママにも見せたいなぁ」
「えまちゃんはママのこと好きなんだね」
「だぁいすきだよ! ママもえまのこと、たからものだよって眠るときに言ってくれるの」
ニコニコと、でもどこか秘密を打ち明けたように照れた様子で、こちらを見上げながら女の子は言った。
「おねえちゃんはぁ?」
「え?」
「おねえちゃんは好きなひといるの?」
不意にそう聞かれて、言葉に詰まる。
自分でも不思議だった。
真っ先に浮かんだのは、崇人の顔ではなかった。
「……うん。おねえちゃんも大事な人はいるよ」
「そうなんだね。じゃあ、しあわせなんだね」
えまとおなじだぁ、と女の子はまた笑ったかと思うと、突然前の方を見て声を上げた。