知らない明日が来たとしても
◇
暁と別れた後、最寄り駅から自宅までの道のりを歩く。
食事をしている間は崇人について聞かれることはなく、いつものように終始仕事のことやくだらない話で盛り上がって終わった。
久しぶりに思い切り笑った気がして、違和感の残る口角に思わず触れる。
仕事をしている時以外はどうしても崇人のことを思い出して気が沈んでしまうけれど、暁といると不思議とそういうことはなく、純粋に楽しい時間を過ごすことが出来た。
暁と一緒にいるといつも自然体な自分でいられると思う。
親友とはこういう存在なのかもしれない。
暁にとっては随分と手がかかる親友なのかもしれないけれど、いつも気にかけてくれることが嬉しかった。
付き合い始めたことを報告した時もどんな人かと聞かれたから、心配を掛けたくなくてすぐに紹介した。
崇人が仕事で都内へ来た時に三人で食事をし、その後で暁が『いい人だな』とほっとしたように言ってくれたことを今でも覚えている。
だからこそ今回の件だけは暁に相談出来なかった。きっと悲しませるだろうし、あの時安堵してくれた彼を裏切ってしまうようで、想像するだけで胸が痛む。
曲がり角を過ぎると、マンションはすぐそこだった。
終電が過ぎた時間の住宅街に人気はない。
街頭もまばらな薄暗い道を一人歩いていると、急に寂しさが込み上げてくる。
あんなことがなければ、今日だっていつも通り崇人の家にいたはずだった。
このまま連絡を無視して、うやむやなままにしたらどうなるのだろう。
自然消滅になって全て無かったことになるのだろうか。
彼のいない生活。その孤独に自分は馴染んでいくことが出来るのだろうか。
じわりと広がる不安を振り払うように、足早にエントランスへと向かおうとした時だった。
「……才佳?」
聞き馴染みのある声にはっとその方向を見やる。
植え込みの煉瓦に座っていた人影が立ち上がり、こちらにゆっくりと向かってくる。