知らない明日が来たとしても
「崇人さん……」
街頭に照らされた顔が見えた時、才佳は驚きのあまり後ろに一歩身を引いた。
崇人は我に返ったように立ち止まると、何もするつもりはないと伝えたいのか両手を挙げる。
「あぁ怖がらせてごめん、こんな夜に黙って待ち伏せされたらびっくりするよね」
「……何しに来たの」
「君と全く連絡が取れないから……ここまで来れば少しはちゃんと話が出来るかなと思って」
「……今は、何も話したくない」
そう告げるのが精いっぱいだった。ばくばくと鳴る心臓を落ち着かせながら視線をそらす。
視界には入っていないのに、崇人がそっと笑ったような気がした。
「”今は”っていうことは、まだ可能性はあるってこと?」
「それは……!」
「迷っていると捉えてもいいのかな」
違う、とはっきり言いたいのに、何も言葉が出ないまま唇が微かに震える。
「才佳……俺の方を見て」
低音の甘い声に促されて、恐る恐る視線を上げる。
一月ぶりに目の前で見る崇人の顔。
反射的にこんなにも愛おしいと思うのに、もう彼は自分だけの恋人ではないのだ。
「……どうして、結婚しようだなんて言ったの」
消え入りそうな才佳の声に、崇人の眉尻がぐっと下がる。
「あれは……本当にどうかしてた。嘘をついている自覚もなかった。自然と口にしていたんだ……」
「私が喜んでいたのを見てどう思ってた? 馬鹿にしてた?」
「そんな馬鹿になんてするわけないだろう。ただ幸せだったよ。全部本心で言っていたことだから」
「そんなこと言われても……もう何も信じたらいいのか……」
「……ごめん、そうだよね。君を傷付けてしまってどれだけ謝っても謝り切れない。でもこれだけは分かってほしくて、今日会いに来たんだ」
崇人の手が才佳の肩に触れる。