知らない明日が来たとしても
「俺が愛しているのは君だけだよ」
傷付けたと言いながら、傷付けられたような表情を浮かべている。
本当に”君だけ”だとしたら、あの写真は一体何だというのだろうか。
嘘偽りの、その場しのぎの言葉。
分かっているのに視線を外すことが出来ないのは、自分が弱いせいなのか。
「君のいない人生は耐えられない。君といると俺はいつでも本当の自分でいられるんだ……」
「……」
「……あと数年、子供が大きくなったら必ず離婚する。約束するよ。そしたら一緒になろう」
「何言って――」
「大丈夫。妻は何も気付いていないし、家のことで才佳に迷惑かけることはない。君は何も気にしないで今まで通りでいいんだよ。いつでもあの家においで」
優しく諭すように言われると、正常な思考が鈍くなっていく。
崇人と話していると、悩んでいるこちらの方が間違っているような気さえしてくる。
もういっそこのまま、知らないふりをして流されてしまった方が楽なのだろうか。
肩に掛けられた崇人の手が才佳の背に回りそうになった時、曲がり角から通行人が現れた。
崇人がすっと手を引っ込めながら微笑む。
「……もし才佳がよかったら家に入れてくれないか? ここじゃゆっくり話せないし」
決断を委ねてくるところが狡いと思った。
才佳が断り切れないということを分かりながら、自分の意志で決めさせようとしている。
まるで操られるかのようにエントランスへと向かいかけた時、ポケットの中の携帯が連続で鳴った。
その振動ではっと我に返り、反射的に画面を確認する。