シェアオフィスから、恋がはじまる〜冴えない私と馴染めない彼〜
4.甘い新生活
 優馬さん(今は名前で呼んでいる)と付き合い始めてから、三ヶ月が経った。
 私は今日も元気に、デザイナーの仕事に励んでいる。

「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!」

 笑顔でオンライン会議を終える。休憩しようと部屋を出ると、そこにいた優馬さんが私を見て微笑んだ。

「機嫌がいいな。何か嬉しいことでもあったのか?」

「はい! 新規でお仕事しているクライアントから、また大口の案件をもらえることになったんです」

「そうか。咲希の努力が実を結んだな」

 そう言って、大きな手で私の頭を撫でてくれる。
 恋人同士になってから、優馬さんはよく私に触れてくるようになった。嬉しいけれど、まだちょっと照れくさい。

「俺は紅茶を淹れて休憩するつもりだが、咲希も飲むか?」

「はい。私はお菓子を用意しますね」

 実は、今私たちがいるのはシェアオフィスではない。
 私と優馬さんは、先月から同棲を始めたのだ。
 広いリビングダイニングが自慢の2LDK。自分の部屋で仕事をするので、それぞれの部屋を分けた。
 ひと休みする時は、今みたいにリビングのソファーに並んで腰掛けて、よくお喋りをしている。

「大口の案件が貰えたのは、優馬さんのおかげです」

「いや、俺は何もしていない」

「いえいえ! 優馬さんに営業のやり方を教えてもらってから、仕事を受注できるようになったんですよ」

 優馬さんは勤めていた会社を辞めて、今ではフリーランスのシステムエンジニアとして活躍中。
 クライアントへの提案力、そして丁寧に対応する姿勢はとても参考になる。
 同棲に伴い、私もシェアオフィスを解約。今は住んでる部屋を二人のオフィスとしている。
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