未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ
揺れる視線と囁かれた言葉
「……随分と、仲がいいんだな」
庭から現れた麗の低い声に、私は思わず身をすくめた。
羽織を直された事…彼の目にどう映ったのだろう。
「ち、違います。ただ……俊樹さんが気遣ってくださって……」
慌てて弁解する私に、麗はじっと視線を注ぐ。
その瞳には苛立ちとも焦燥ともつかない感情が揺れていて、胸が苦しくなる。
「失礼します」
俊樹は、私たちに会釈して、お屋敷の方へ向かった。
「……俺の前だけで笑え」
ぽつりと零れた言葉は、私の心臓を強く叩いた。
そのとき、美咲が現れる。
「麗様、こちらに……」
にこやかな声とは裏腹に、私を一瞬だけ鋭く見下ろす視線。
それは誰にも気づかれない、小さな刃のように私の胸を刺した。
美咲が私にだけ聞こえるような声で囁いた。
「ここは、あなたのいる場所じゃないのよ」
次の瞬間には、彼女は何事もなかったように麗へ笑いかける。
――私の鼓動は、不安と恐怖で速さを増していた。
「……ああ、行く」
麗は私の手を軽く握りしめると、まるで所有を示すように離そうとしなかった。
そのぬくもりに胸が高鳴るのと同時に、美咲の視線が背中に突き刺さるようで息苦しくなる。
――この屋敷に来てから、私はいつも誰かの視線に追われている。
俊樹の優しさ、麗の独占欲、美咲の嫉妬。
その全てに心を揺さぶられながら、私はどこへ向かっていくのだろう――。