未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

気づいた影

ほんの数分――書類の確認を終え、再び応接間に戻ると、
――部屋にいるはずの莉緒の姿はなかった。

「……莉緒?」
声をかけても返事はない。
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
(どこに……? 無事か……?)

麗は慌てて廊下へ駆け出し、屋敷の奥まで呼びながら探し始めた。
普段は冷静沈着な麗の顔に、初めて焦りと不安が浮かぶ。

「莉緒……どこだ?」
廊下の方から足音が近づいた。

「麗様」
現れたのは、美咲だった。
いつものように完璧な微笑を浮かべている。

「莉緒さんですか? 莉緒さんなら……少し休みますとおっしゃっていましたよ」

麗は一瞬、目を細める。
「休む? 俺が許可した覚えはないが」

その冷ややかな声に、美咲の笑みがわずかに固まった。
「……ご気分が優れないように見えましたので」

麗は返事をせず、彼女をすり抜けるように歩き出した。
その背は迷いなく、屋敷の奥へと向かっている。



――同じころ。

莉緒は、暗い部屋で震えていた。
閉ざされた扉を叩いても、返事はない。
助けを求める声は、誰にも届かないまま、胸の奥で空しく響くだけだった。

だが。
その沈黙の向こうに、確かに足音が近づいていた。


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