未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

掴んだ手、離さない

「莉緒!」

麗の声が、屋敷の奥に響き渡る。
その声を聞いた瞬間、莉緒の胸にわずかな安堵が広がった。けれど、指先は限界に震えている。

「麗様……っ!」
縋るような声が漏れる。

次の瞬間、麗が駆け込んできた。鋭い視線が状況を一瞬で捉えると、顔色が変わる。
「……くそっ!」
彼の喉から絞り出されるような低い声。

麗は身を投げるように床へ滑り込み、穴にしがみつく莉緒の手を力強く掴んだ。
その瞬間――
(もう二度と……失うものか!)

心臓が張り裂けるほどの恐怖が麗の胸を締めつける。
彼はかつて、大切なものを守れなかった過去を思い出していた。
だが今度は違う。莉緒を、この手で絶対に引き上げる。

「放すな、莉緒!」
「は、はい……!」

震える莉緒の瞳に、涙が滲む。
「怖い……」

「黙れ! 今は俺だけを見ろ!」
その叫びは恐怖を振り払うようで、莉緒の心に真っ直ぐ突き刺さった。

ぐっと力を込め、麗は莉緒を一気に引き上げる。
倒れ込むように抱き寄せると、腕の中にある温もりを確かめ、強く強く抱き締めた。

「……よかった……」
低く震える声。耳元で、麗の本音が滲む。
「もう、今度こそ……失うなんて、耐えられない」

莉緒は驚いて顔を上げた。けれど、その目はただ真剣で、苦しげで――
彼の胸の奥に隠された孤独を垣間見たような気がした。

(麗様……)
胸の奥が熱くなり、涙が止められなかった。



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