未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

選ばれし“リオ”


静まり返った部屋には、巻物をめくる音だけが響く。

実は、お芝居を打つ前、麗は、莉緒に九条家に関する事を伝えた。もう莉緒に黙っておく事が出来ないと思った。

ここは以前麗から入ってはいけないと言われた部屋
莉緒は、驚きを隠せない。
そこには、古びた巻物がいくつも置いてあった。

古びた巻物には、何度も書き記された「リオ」という名。

「……九条家には代々、“リオ”と呼ばれる者が現れると伝えられてきた」
麗の声は低く、重い。

莉緒は、幾度も現れた“リオ”の記録に目を見張った。
「こんなに……たくさん……?」

そこには微笑む女も、涙する女も描かれている。
けれど――どれも少しずつ古文書の“本物のリオ”とは違っていた。

「そうだ。何度も何度も……俺の前に“リオ”は現れた。だが、そのすべてが偽りだった」
麗は拳を固く握りしめる。

しばし沈黙が流れた後、彼は苦しげに吐き出すように言った。
「……その中に、俺が心から愛した者もいた。だが結局――違った。気づいた時にはもう、すべてが遅かった」

莉緒は息を呑んだ。
麗様が過去に、別の“リオ”を愛していたなんて…胸が苦しかった


「だからこそ……俺はもう、間違えない。初めてだ。古文書の言葉と、この俺の心が――完全に重なったのは」

麗の真っ直ぐな瞳が、莉緒を捕らえる。
「莉緒。お前が“本物のリオ”だ」

胸が激しく震え、涙が零れ落ちる。
「私が……本物……?」

「そうだ。もう二度と、偽りの幻に惑わされはしない。お前を守るためなら、何度でも運命に抗う」

麗の指がそっと莉緒の頬に触れる。
その温もりは、過去の痛みも未来の不安も包み込むようだった。
そして静かに唇が重なる

だが莉緒の心には、ひとつの影が残る。
(偽物のリオたちを送り込んできた“影”……それは一体、誰なの?)

麗は彼女の不安を見透かしたように、静かに囁いた。
「もう繰り返させはしない。莉緒……お前だけは、絶対に離さない」



< 28 / 36 >

この作品をシェア

pagetop