未来へ繋ぐ、禁断のタイムスリップ

屋敷の秘密と麗の気配

お屋敷は、静かで広すぎて少し怖い。

麗は、常に私の隣にいる。監視されてる?

「今日は屋敷の中を案内する」
麗がそう言い、私を奥の廊下へと誘う。
歩くたびに、重厚な木の床がきしむ。
大きな肖像画、彫刻、そして何より、この屋敷に漂う独特の空気……。

「ここは……本当に、普通の屋敷じゃない……」
思わず小さく呟くと、麗が横で淡々と答える。

「九条家は代々、ただの財閥ではない。歴史も秘密も多い」
少し間を置き、彼は私を見下ろす。
「だが、今は気にするな。お前には少しずつ教えてやる」

その言葉に、胸がざわつく。
何か重大なことがあるの?私とこのお屋敷はどんな関係なの?
1人で自問自答していた。

廊下を進むと、突然、麗が立ち止まった。
「ここは立ち入るな――莉緒」

扉の奥に広がる部屋は、厚いカーテンに覆われ、明かりも消えている。
私は思わず覗き込み、好奇心が抑えきれなくなる。

「何があるの?」
小さな声で尋ねると、麗は腕を伸ばし、私を軽く引き戻した。
「お前にはまだ早い。だが、いつか理解できる日が来る」

その瞬間、私は感じた――
傲慢で俺様な彼の奥に、深く秘密めいた優しさと、孤独が隠されていることを。

「……理解できる日が来るのか」
心の中でつぶやきながら、私は彼の視線に捕らわれた。
その瞳は、冷たくも、そしてなぜか温かくて、胸をぎゅっと締めつける。

猫の声も聞こえず、静まり返った屋敷の中で、私たちはしばらく無言で歩いた。
――少しずつ確かに、麗の気配が心を満たしていく――。
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