街の優しい弁護士の偽装恋人……のはずが、本命彼女になりました!
 話ながら歩いていると、駅に着くのが、急に惜しくなった。
 もう少し話をしたい。彼を知りたい。
 歩調は自然と遅くなり、彼も合わせてくれて、ゆっくりになる。
 駅に着いたら足が止まってしまい、彼も立ち止まった。

「あの……また改めて服のお礼をさせてください」
 どきどきしながら遼子は言う。
「お礼なんていいんですよ」
 やんわりと断られ、遼子は内心でため息をつく。
「ですが、もしよろしければお食事などいかがですか?」
 続いた言葉に、遼子はぽかんと彼を見る。

「お嫌でなければ」
「ぜひ!」
 食い気味に答えてしまい、はっと口を押える。
 彼は苦笑をもらし、慈愛に満ちた目で遼子を見た。
 遼子はかあっとなって目を伏せる。そんな目で見られたら、彼に好かれているように錯覚してしまいそうだ。

「なによ! 女はいないって言ったくせに!」
 唐突な叫びに、遼子は思わずそちらを見た。
 そこにいたのは、カフェで水をかけてきた黒髪の美女。胸元が大きく開いた黒いワンピースで、タイトなスカート部分には長々とスリットが入っている。黒髪はウェーブでボリュームを出して、前に見たときより女っぷりが上がっていた。
 その彼女が、今は怒りに肩を震わせて、目をつりあげて昂大をにらんでいる。
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