街の優しい弁護士の偽装恋人……のはずが、本命彼女になりました!
土曜日、遼子はどきどきしながら駅前に立っていた。
待ち合わせスポットでもあるので、あちらこちらに人待ち顔の人が立っている。駅に向かう人もいれば百貨店に行く人もいて、駅からはアナウンスが聞こえ、雑多な音にあふれている。
「弁護士と知り合うなんて、ある意味でファンタジーかも」
くすり、とひとりで笑う。
水をかけられた縁で知り合うなんて、物語では陳腐でも現実では劇的だ。
もしかして、このあとも劇的な展開があったりする?
思い付きは、マッチの火のようにぽっと灯り、瞬く間に遼子の心に燃え広がっていく。
彼の穏やかな笑顔が蘇る。秋の日差しのようにさわやかで、心地よい笑顔。
「ないない、あはは」
はずかしい妄想に手をぱたぱたと振って自分に風を送る。
待ち合わせをしたものの、今日はクリーニング代をもらってすぐに解散のはずだ。振込ではないのは、彼が改めてお詫びをしたいと言って譲らなかったからだ。
律儀なのは弁護士ゆえなのか、彼の性格ゆえなのか、おそらくは後者だろう。
よこしまな気持ちは捨てなくちゃ、と深呼吸をしたときだった。
「紙森さん」
声がかかって、心臓が口から飛び出しそうになった。
「はい!」
慌てて振り返ると、ラフな服装の昂大がいた。どんな服装も似合うのはイケメンの特権かな、などと頭をよぎる。
「お待たせしてすみません」
「いえ、待ってません」
どきどきする胸を押さえ、彼に言う。