街の優しい弁護士の偽装恋人……のはずが、本命彼女になりました!
「では行きましょうか」
 言われて、首をかしげる。
「どちらへ?」
「服を買いに。弁償します」
 遼子は目を丸くした。

「水をかぶっただけですし、コーヒーをおごっていただきましたし、クリーニング代ですら申し訳ないくらいですのに弁償なんてけっこうです」
「そんなわけにはいきません」
 なんて頑固な人なんだ、と遼子は半ばあきらめた。いっそ一番安い服でも買ってもらえば納得して終われるだろう。弁護士なら稼いでいそうだし、懐が痛くなるなんてこともないだろう。

「では、お願いします」
「わかりました。タクシーを待たせてありますので」
「え?」
 遼子はまた驚いた。
 が、催促するような目で見られ、大人しく彼について歩く。

 タクシーに乗って連れられたのは繁華街の一等地にあるブランドショップの路面店だった。
「嘘……」
 車を降りて呆然とする彼女を連れて、彼は平然と店に入っていく。
「ま、待ってください、こんな高そうな店」
 慌てて止めるが、じろりと見られると言葉に詰まる。弁護士はこんなに迫力があるものなのだろうか。

「なにも問題はありません」
「はい……」
 断言されて、すごすごと彼についていく。
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop