不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
「常務の嶋賀です」

常務⁈ この人が嶋賀絢人(しまがあやと)

歩実は驚きのあまり妙な声が出そうになり、慌てて口を押さえた。

「お疲れさまです。早速ですが、そちらの部署に桃瀬歩実さんが在籍していると思うのですが、私の不注意で怪我をさせてしまいましたので、今から医務室で受診してもらいます」

「────────」

「そうですね、はい、では、そういうことでよろしくお願いします」

絢人は通話を終えると歩実に向き直り、

「さぁ、行こうか。立てますか?」

スッと手を差し出した。

歩実は肯首し、差し出された絢人の手を取ると、ギュッと握り返された。

「あ、あのっ。申し訳ありません。常務とは存じ上げず…… お忙しいでしょうから、どうぞ仕事に戻られてください。私は一人で大丈夫ですので」

遠慮する歩実に向かい、ゆっくりとかぶりを振る。

「いいえ、それでは私の気がすみません」

そこまで言われては断るのもどうかと思い、歩実がお願いしますと返事をすると、柔らかい表情をを浮かべ、微笑んだ。

その笑顔にまたもや心臓が跳ねる。

なんだか聞いていた話と違うな。堅物で人を寄せ付けないタイプだったんじゃなかったっけ?全然そんなことないけど……

歩実は首を傾げた。

「どうしました?」

「い、いえ」

「さぁ、行きましょうか」

「はい」

歩実は絢人に支えられながら、4階フロアにある医務室に向かった。


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