不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
「あらっ、絢人、あなたもいたの!」

「どこ行ってたんだよ、まったく! そうだ、彼女を診て欲しいんだ」

絢人は先ほど起こった出来事を詳細に語って聞かせた。

「ちょっと、そこに横になりましょうか。ネームは預かるわね」

診察台に横になるよう促した安曇は、歩実からネームをを受け取ると一瞥し、僅かに口角を上げた。

「はい、これ持って、あっちの部屋で待ってなさい」

「わかった。終わったら声かけてくれよ」

「はいはい」

ネームを絢人に手渡し、絢人が診察室を出て行くのを見届けた安曇は歩実に向き直った。

「さぁ、診察を始めましょうか。痛みはない?」

「押さえた時少しだけ痛いです」

安曇は患部を丁寧に触診し、エコーも撮った。

「骨折もないし、しばらく痣は残るだろうけど、問題ないでしょう。もし、痛みが続くようだったら、また診せてくれる?」

「はい、わかりました」

「ちょっと、弟を呼んでくるわ」

安曇はドアを開け、絢人に中に入るよう声をかけた。

絢人にも同様に説明する。説明を聞いた絢人は、安堵の表情を見せた。

「あのぅ、先生と常務はご姉弟なのですね?」

「そうよ。私、結婚する前は救命医だったの。結婚する時に、ちょうど会社に医務室を設置するっていう話が出てて、それなら私がってことになったのよ。救命医は自分の時間を確保するのも難しいから」

「そうだったんですね」

「ここはホワイトだからいいわぁ」

「当たり前だろう。職場環境が良くなければ仕事のパフォーマンスも落ちるからな」

「あらっ、ちょっと役員らしい発言じゃない。昔のは手がつけられないほどやんちゃだったのに」

うふっと笑う安曇。

「もう止めてくれよ、昔の話は」

「えーーーっ、いいじゃなぁ〜い。この子ね」

「だから止めろって!」

歩実に何か話そうとする安曇を慌てて制止する絢人。

ふたりのやりとりを微笑ましく見ている歩実だった。
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