不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
「お忙しい中、大変申し訳ありませんでした」
診察を終え医務室を出ると、歩実は絢人に向かい深々と頭を下げた。
「俺の方こそ、申し訳ない」
絢人も頭を下げる。
「やめてください!」
歩実は顔の前で、ブンブンと手を振った。
そして思う。ぶつかった時、自分と絢人との立ち位置が逆だったら、絢人が怪我をしていたはずだ。不運が自分に向いてくれて良かったと。
その思いが、無意識のうちに口から零れ出た。
「よかった」
「え?」
「あっ、え? すみません! ちょっと考え事をしてまして」
「考え事? 何?」
「あ、あぁ…… その…… 」
「どうした?」
「わ、私、不運を呼び寄せるので、怪我をしたのが常務じゃなくてよかったって、そう思ったんです」
「え? 不運を呼び寄せる?」
「はい。子どもの頃から、私に関わった人たちは大抵不幸なことが起こるんです。だから…… なので私はこれで失礼します。常務ももう関わらない方がよろしいかと」
「それ、本気で言ってる?」
「はい」
「そっか……でも、その思考は改善した方がいいと思うよ」
「え?」
「君はずっと悩んできたんだよな。その悩み背負いながら生きてきたんだよな。俺なんかが、意見するのもどうかと思うけど、だけど、君は自分が思っているより、きっとたくさんの元気や幸せを周りの人たちに与えてきたはずだ。人は生きていれば、何かしら壁にぶち当たったり、それこそ、怪我をしたり、病気になったりする。それは全部君の所為か? 違うだろう? もっとポジティブに考えよう。桃瀬歩実さん、君は唯一無二の存在なんだから」
「常務……」
歩実の目頭がじわりと熱を帯びる。瞬きと同時に、 涙が頬を伝った。
絢人がポケットからハンカチを取り出し、歩実の涙を優しく拭う。
「それじゃあ、俺は行くよ。無理はしないように。いいね?」
歩実がコクンと頷くと、絢人はその場をあとにした。
絢人の後ろ姿を見送る歩実。心がキューッとなる。
あれ? このキューッてなる感覚。前にも味わったことがあるような……
歩実はその感情がいつのものだったのか、その時はまだ思い出せずにいた。
診察を終え医務室を出ると、歩実は絢人に向かい深々と頭を下げた。
「俺の方こそ、申し訳ない」
絢人も頭を下げる。
「やめてください!」
歩実は顔の前で、ブンブンと手を振った。
そして思う。ぶつかった時、自分と絢人との立ち位置が逆だったら、絢人が怪我をしていたはずだ。不運が自分に向いてくれて良かったと。
その思いが、無意識のうちに口から零れ出た。
「よかった」
「え?」
「あっ、え? すみません! ちょっと考え事をしてまして」
「考え事? 何?」
「あ、あぁ…… その…… 」
「どうした?」
「わ、私、不運を呼び寄せるので、怪我をしたのが常務じゃなくてよかったって、そう思ったんです」
「え? 不運を呼び寄せる?」
「はい。子どもの頃から、私に関わった人たちは大抵不幸なことが起こるんです。だから…… なので私はこれで失礼します。常務ももう関わらない方がよろしいかと」
「それ、本気で言ってる?」
「はい」
「そっか……でも、その思考は改善した方がいいと思うよ」
「え?」
「君はずっと悩んできたんだよな。その悩み背負いながら生きてきたんだよな。俺なんかが、意見するのもどうかと思うけど、だけど、君は自分が思っているより、きっとたくさんの元気や幸せを周りの人たちに与えてきたはずだ。人は生きていれば、何かしら壁にぶち当たったり、それこそ、怪我をしたり、病気になったりする。それは全部君の所為か? 違うだろう? もっとポジティブに考えよう。桃瀬歩実さん、君は唯一無二の存在なんだから」
「常務……」
歩実の目頭がじわりと熱を帯びる。瞬きと同時に、 涙が頬を伝った。
絢人がポケットからハンカチを取り出し、歩実の涙を優しく拭う。
「それじゃあ、俺は行くよ。無理はしないように。いいね?」
歩実がコクンと頷くと、絢人はその場をあとにした。
絢人の後ろ姿を見送る歩実。心がキューッとなる。
あれ? このキューッてなる感覚。前にも味わったことがあるような……
歩実はその感情がいつのものだったのか、その時はまだ思い出せずにいた。