不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
今度は歩実が瞬きを繰り返す。

絢人は声をかけてきた男性の方へ向かい、並んでカウンター席に腰掛けた。

「宮脇さん、今、あの男性、常務のことケンって言ってましたよね?」

「え? そうだっけ? ゴメン、私、爽やか常務にびっくりして聞いてなかった」

「そ、そうですか」

「じゃあ、戻ろうか。皆んなに常務のこと話しちゃおう」

ニンマリ顔で歩き出す宮脇。そのあとをついて行く歩実だったが、何故ケンと呼ばれたのかどうしても確かめたくなり、忘れ物を取りに行ってくると理由をつけ、宮脇に先に行くよう促した。

「じゃあ先に会社戻っとくね」

「はい。ごちそうさまでした。ありがとうございました」

歩実は丁寧にお辞儀をすると、定食屋へと急ぎ戻った。

定食屋の引き戸をガラガラと開け、絢人に視線を向けると、先ほどの男性と会話しながら食事をしている。歩実は絢人に歩み寄り、意を決して声を掛けた。

「すみません、常務」

絢人は振り向き、目を見開く。

「どうした?」

「あのっ、お話がありまして、少しお時間をいただきたいのですが」

絢人は少しの間思案する表情を見せ、「わかった」と答えると、カウンターの上に置いてあったスマホを手に取り、歩実に差し出した。

「これに番号入力してくれるかな。折り返し連絡するから」

「わかりました。ちょっと失礼します」

スマホを受け取った歩実は、開かれた連絡先画面に自分の番号を入力すると、絢人に手渡した。

「お昼時に申し訳ありませんでした。それでは失礼いたします」

歩実は会釈をすると、踵を返し定食屋をあとにした。
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