不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
「この中で、責任者的立場の方はいらっしゃいますかな?」

「ディレクターの紺野(こんの)と申します」

スレンダー美人で、年齢は32歳。所謂バリキャリといった風貌の紺野が、スッと前へ出た。

「紺野さん、とおっしゃおましたな? 申し訳ないんですが、貴女には私共と一緒に、取引先企業や銀行、その他諸々、今後の対応に当たっていただくことになります。社員さん方のハローワークへの手続きなどもすぐさま行なって参りたいと思っておりすので」

「かしこまりました」

努めて冷静な紺野に、窮地に立たされているにもかかわらず、歩実は安堵感を覚えていた。
それはきっと、紺野が誰にでも慕われる、強い責任感の持ち主だということを身をもってわかっているからだ。歩実自身、紺野には幾度も助けられ世話になった。

案の定、迅速な対応で、社員はすぐさま就職活動に着手できた。給付金も支給されることになり、これでしばらくは生活も保障される。

初めから紺野が代表を務めていれば、こんな事態に陥ることはなかったのではないかと、社員全員が思っているであろうことは否めない。
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