不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
地下道を進み、ロビー階を目指し階段を上りきる。
都庁通りを行き交う車はさほど多くはないが、一台のバイクが爆音を轟かせていた。

あのバイク、スピード出しすぎだよ。

そんなことを思いながらバイクを横目にエントランスに向かって歩いていると、キーーーーーッ! ドンッ! とものすごい音と共にバイクがスリップし、停車していたバスにぶつかった。バイクは横転。ドライバーは道路に投げ出された。

何か対処しなければと思うものの、事故を直視してしまった歩実は足がすくんで動くことができない。エントランス前にいたホテルスタッフが駆け寄り機敏に対処し始めた。その様子を歩実は見ていることしかできなかった。

「私がいたから、事故が起こってしまったの? やっぱり私は不運を呼び込むの?」

歩実の目から、ぶわっと涙が溢れた。息も苦しい。
どうしょうもない感情に襲われ震える歩実を誰かがギュッと抱きしめた。

「大丈夫、大丈夫だ」

顔を上げた歩実の目の前には、悲愴な顔で見つめる絢人がいる。

「常務……うぅぅぅっ」

絢人は歩実を一層強く抱きしめた。

絢人のドクンドクンと脈打つ規則正しい心音が、歩実に冷静さを取り戻させる。
その間絢人は、子どもを宥めるように、歩実の背中を優しくポンポンと叩いていた。
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