不運を呼び寄せる私ですが、あなたに恋をしてもいいですか?
歩実が仕事に慣れて来た頃、アメリカインディアナ州に建設中だった物流施設が完成し、当初から携わっていたメンバーが帰国することになった。その中には社長の次男嶋賀絢人(しまがあやと)も設計士としてメンバーに加わっており、帰国後は常務の役職に就くことになっている。

長男の亮也(りょうや)は専務として既に社長の右腕として会社を支えている。年齢は36歳。頭脳もルックスも人間性も完璧な所謂ハイスペック。既婚者で二児の父親だ。おまけに愛妻家で、女性社員にとっては手も足も出ない遠い存在だ。

一方次男の絢人は33歳独身。亮也同様、全てにおいてハイスペックだが、仕事一筋で堅物な性格なのだという。職人気質で人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しているのだと、宮脇含め女性社員が口を揃える。なかなか厳しいし人であることは容易に想像がついた。

常務と契約社員、きっと関わることはない。だから厳しくても関係ない。歩実はそう思っていた。

実際、帰国したという情報は入ってきたが、1,000人以上もの社員が働くビル内。部署やフロアが違えば顔も知らない社員が多くいる。役員など滅多に顔を見ることもないのだ。二ヶ月経った今でも、社内ですれ違うどころか顔も見たことはない。

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