桃ちゃんセンセと田宮くん
「専攻は今も宇宙工学?」
「そう」
「だから、あの大学にいたんだね」
私はようやく腑に落ちた。
田宮くんの進学した大学は今日私がリクルートに訪れていたところじゃかったから。
「すごいじゃん。あそこの大学院って宇宙関係の研究では日本の中でトップクラスじゃん」
「入れただけで研究で食っていけるかは別だから。実際、俺よりすごい人間はゴロゴロいるし」
私は首を振った。田宮くんのいうように上を見ればきりがないかも知れないが、博士課程に身を置いている時点で彼もまた、選ばれし人間の一人なのだから。
そう言おうとして。
私は自分の口が動かないことに気がついた。
なんで、と自問しなくてもわかっている。そして頭のいい田宮くんにはバッチリ伝わっていた。
「桃ちゃんセンセ、昔から安易な慰めしないもんな」
図星とでも顔に書いていたのだろう。私を見てフッと相好を崩した田宮くんは、ねぇ、と声を潜めた。
「ねぇ、桃ちゃんセンセ。あの詩覚えている? 今諳んじてくれない?」