甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
ぽつんと取り残された私は、広すぎるリビングの真ん中に立ち尽くし、夜景を見つめた。
煌びやかな街の光は、まるで別世界のもののように遠く、冷たく瞬いている。私の心を映すかのように、どこか寂しげで、触れられない美しさだった。
──私は、何をしているんだろう。
お金のために結婚して、今までは無縁だったこんな豪華な家に住んで。
けれど、心はちっとも幸せじゃない。胸の奥に、罪悪感がじわじわと広がっていく。
祖母の教えに背いたような、【みやび】を裏切ったような、そんな重い感覚が息苦しさを連れてくる。
それでも、事実だけは私の心を支えていた。
【みやび】を守れた。従業員の生活を守れた。また、辞めていった職人さんに声もかけれて……また、元通りになる。父の肩の荷を下ろせた。
あの蔵で働く人々の笑顔を、味醂の香りを、未来に繋げることができたのだ。
ただ、違うのは大富豪の妻になった事実だけだ。
「……頑張らなくちゃ」
自分に言い聞かせるように呟いた。