甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜



 思わずこぼれた言葉に、涙が滲みそうになった。慌てて目を瞬かせ、感情を押し込める。


 「その……この味醂……」


 言葉を続けるのが怖かったが、聞かずにはいられなかった。


 「【みやび】のだ」


 短い答えに、心臓が止まりそうになる。


 「どうして……? なぜ、うちの味醂を……?」


 声が震え、言葉が途切れがちになる。彼は一瞬、鍋を見つめたまま黙り込んだ。まるで、言葉を選んでいるかのように。



「俺は……ずっと、あの味醂のファンだった。……隠していたがな」


< 25 / 59 >

この作品をシェア

pagetop