甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
「……ファン? ファンって……」
信じられない言葉に、頭が混乱する。この大富豪が、【みやび】の味醂を愛している? 私の家の、借金にまみれた小さな老舗の味醂を?
彼はゆっくりと顔を上げ、鍋から湯気を漂わせながら続けた。
「……そんなにおかしいか」
「いや、いえ! 意外だなって」
「……金と名声だけが人生じゃない。俺にとって料理は、大切な趣味だ。ストレスを忘れ、頭を整理する時間だ。その中で出会ったのが、みやびの味醂だった。どのブランドとも違う、深みと優しさがある。あの味は、俺の料理を特別なものにしてくれた」
彼の声は静かだったが、そこには確かな情熱が宿っていた。冷たい仮面の下に隠された、初めて見る彼の本当の顔。真剣な眼差しが私を捉え、胸の奥で何かが大きく揺れた。