甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
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《周寧side》
書斎の扉を閉め、静寂に包まれた自室に戻った俺はソファに深く身を沈めた。
窓の外に広がる夜景は、いつも通り冷たく、無機質に瞬いている。だが、今夜はそれが妙に胸に刺さっていた。
紫月の作った味噌汁の味が、まだ舌に残っていた。ほのかに甘い、味醂の香り。あの味は、母の記憶を呼び起こすと同時に、もっと遠い、封印していたはずの記憶を揺さぶった。
それは──あの夏の日、彼女に初めて会った時のこと。