甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
学生時代、母が体調を崩し、俺が台所で不器用に煮物を作っていた頃。家は裕福で恵まれて育った俺は包丁すら握ったことなかったのにあの頃の俺は、ただ母に喜んで欲しくてがむしゃらに生きていた。
将来のことなど考えず、ただ母を笑顔にしたい一心で、【みやび】の味醂を手に鍋に向かっていた。
そんなある日、母の知り合いが営む小さな蔵元を訪ねたことがあった。それは料理によく使う【みやび】の味醂蔵だ。古びた蔵の裏庭で、俺は彼女と出会った。
それが紫月だ。
まだ少女だった彼女は、祖母の手伝いで蔵の仕事をしていた。
陽光に照らされたその横顔は、まるで絵画のように鮮やかに今でも俺の目に焼きついている。