長すぎた春に、別れを告げたら
「……あ、元カレの件ですが、もうほかに好きな人がいると言ってあきらめてもらおうとしたら誰なのか聞かれたので、つい会計顧問の先生だと言ってしまったんです」

説明するついでに弁明した。

「ああ、そうだったんですね」

相良さんは合点がいったように相槌を打つ。ひとまず誤解が解けてほっとする。

まさか目の前に本人が現れるとは想像すらしていなかったので、適当に彼の名前を出してしまったのだ。

「今さらやり直したいなんて、治久はいったいなにを考えてるんだろう……」

つい独り言が漏れた。

相良さんは聞こえなかったのか、こちらに視線を向けず食事を続けている。

「私、彼の浮気を許せなくて別れたんです」

普段は自分から他人に個人的な話はしないほうなのに、なぜか本音があふれ出す。

相良さんにはあんなところを見られてしまったし、少し自暴自棄になっているのかもしれない。

八年付き合っても結婚してくれなかったから別れを切り出したわけじゃなかった。決定打になったのは治久の浮気だ。

マッチングアプリで知り合った複数の女性と遊んでいるようだと、大学時代の共通の友人が教えてくれた。
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