長すぎた春に、別れを告げたら
――まあ、ただの遊びで本気じゃないみたいだし、今回は大目に見てやったら? ていうか、アラサーで彼氏と別れるのは怖くない? 友人にはそんなふうにも言われた。

たしかに八年来の彼氏と今さら別れたら、一生独身で過ごすことになるかもしれない。

付き合いたてのようなときめきはもうなくても、治久とは長い時間を一緒に過ごしてきた思い出がある。浮気くらいで関係を壊すのは惜しい。

そう考えて、いったんは飲み込もうとした。でも私には無理だった。

「許さなくていいと思います」

相良さんは静かに口にした。

周りから穏便に済ませろという意見ばかり向けられていたから、虚を衝かれてしまう。

相良さんは興味本位で根掘り葉掘り聞いてくることも、詮索してくることもなかった。

つらい思い出は振り返らなくていいとでもいうように、そのひと言でこの話を終わらせる。正直、とても救われた気がした。

不思議な人だな、と不意に思う。

希帆さんたちは彼をクールだと言うけれど、『濡れても溶けない』発言でおもしろい人だと感じたり、まさかの二宮金次郎と言われて意表を突かれたり。

本当の彼はどんな人なのか関心を持った。

「相良さんは今のお仕事にやりがいを感じていますか?」

なにげなく尋ねると、彼は首をかしげる。
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