長すぎた春に、別れを告げたら
「車で送りますよ」

「いえ、大丈夫です」

まだ外は薄明るいし、ひとりで帰れる。

「じゃあね、メルくん」

相良さんはなにか言いたげにしていたけれど、私は彼にも挨拶をしてマンションを出た。

その途端、一気にへなへなと気が抜ける。

彼の前では平静を装っていたとはいえ、ふたりきりの空間にかなり緊張していたみたいだ。メルくんがいてくれて本当によかった。

男の人の部屋に入ったのなんていつぶりだろう。広いリビングはきれいに片付いていて、とてもいいにおいがした。

……早く帰って、借りた小説を読もう。

相良さんのことが頭から離れられなくなりそうで、私は意識的に本に目を向けた。


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