長すぎた春に、別れを告げたら
それから数日後。

治久が私のマンション前で待ち伏せをするようになった。

スマートフォンを新しくした際に電話番号を着信拒否し、メッセージをブロックしたからだろう。

治久があきらめて帰る深夜まで私は自分の部屋に入れなくなり、このところカフェで時間をつぶしたりしている。

「はあ……」

まさか治久がストーカーのようになるなんて。

私の最初の対応が悪かったのだろうか。別れははっきりと伝えたし、期待を持たせる言動はしていないはずだ。

治久にも言い分があるのだろうけれど理解不能だった。

「ついに今日だよ! 相良さんとランチに行ける日!」

相良さんの訪問日は、朝から希帆さんたちが騒いでいた。みんな普段よりもおしゃれしていてばっちりメイク、目もとには大粒のラメがキラキラしている。

十二時になると監査チームの人が声をかけに来て、希帆さんと雫ちゃんは相良さんたちとオフィスを出て行く。

私はひとり残って、手作りのお弁当を食べた。

相良さんに借りた本を返したかったけれど、みんな聞き耳を立てるだろうし、ここで彼と個人的な話をするのは難しそうだ。

治久の件が憂鬱で食欲がなく、お弁当を半分残してノートパソコンに向き合った。仕事をしているほうが気は紛れる。
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