長すぎた春に、別れを告げたら
しかも翌朝起きてリビングに行ったら、朝ごはんも用意してくれていた。

「おはようございます。サンドイッチを作って冷蔵庫に入れています。よければどうぞ。俺は先に出るので、合鍵を渡しておきます」

相良さんから鍵を受け取りながら、つい呆然とする。

私はまだパジャマなのに彼はもうスーツを着ていて、今日も完璧に整っている。

「どうして私にここまで親切にしてくれるんですか?」

あまりにも不可解で、率直に尋ねた。

私を手厚くもてなしても、彼にはなんのメリットもないはずだ。

「そうですね。強いて言えば、あなたがどこまでいけば俺を頼るのか気になっています」

「私は研究対象ですか?」

眉をひそめると、相良さんはクスクス笑った。ただの冗談だったのだろう。

彼がなにを考えているのかわからない。

そもそも私はもう恐縮するほど彼を頼らせてもらっている。いったい私をどうしたいだろうか。

「それじゃあ行ってきます」

結局彼は答えてくれずに仕事に向かった。

「……はい。行ってらっしゃいませ」

彼を送り出し、ダイニングでサンドイッチを食べる。具材はたまごとハム、レタス。それからピーナッツバター。どれもおいしい。

メルくんは私が起きてくるのを待っていたみたいで、遊んでほしそうにしている。

カーテンの隙間から降り注ぐ、朝の日差しが眩しい。窓の外は、見慣れない景色だ。

それでもまだ自分が相良さんのマンションにいることが実感できなかった。


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