長すぎた春に、別れを告げたら
ふと彼の手もとを一瞥する。

「相良さん、ご自宅でもお仕事ですか?」

「ああ、これは開業準備です」

「開業? 相良さん、独立するんですか?」

私は目を見開いた。

「はい」

相良さんがうなずく。公認会計士は大手の会計事務所で実務経験を積んだのち、独立する人が多いという。

ここ数年で人脈も築き、着々と布石を打っているそうだ。

「すごい……」

向上心があり、常に努力を怠らない彼の前では、なんだか自分が恥ずかしくなった。

部屋でひとりになると、本の山に自然と目がいく。読書が好きな私は居候中も本が手放せず、たくさん持ってきていた。

でも、それだけいいの? ただ本を読むだけで満足なの?

私は自分自身に問いかける。

胸を張って相良さんと向き合えるようになりたい。そんな思いが込み上げていた。


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