長すぎた春に、別れを告げたら
「侑くんちに連れて行ってくれるの?」

さとみをタクシーに押し込んで隣に座ると、さとみは俺に寄りかかりながら上目遣いを向けた。

酒くさい。想像以上に飲んでいるようだ。

「違う。家に送る」

「えーやだ。こんなにベロベロで帰ったら、お母さんに怒られるじゃない」

「じゃあその辺の道端で寝て帰るか?」

「侑くんの意地悪!」

さとみはぷくっと頬を膨らませた。こんなに子どもっぽいのにもう酒が飲める年齢で社会人なのだから不思議だ。

末っ子だからと俺を含めて上三人の兄で甘やかしすぎたのが原因かもしれない。

侑くんではなく、お兄ちゃんと呼べと何度言っても直らなかった。

実家の門をくぐると、正月くらいしか顔を出さない素っ気ない息子の姿に気づいた母は驚いて外に出てくる。

「侑史、どうしたの」

「酔っ払いを回収した。あとはよろしく」

「さとみ、足がふらふらじゃない!」

母は俺からさとみを引き取った。これで十分、兄としての役目は果たしただろう。

「侑くん、待って」

帰ろうとすると、さとみに呼び止められる。
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