長すぎた春に、別れを告げたら
相良さんははっと我に返ったように私から体を離す。

「いきなりすみません。ちょっと気持ちが抑えられなくて」

「い、いえ、こちらこそ……」

お互いに謝り合って、変な空気が流れた。

相良さんは私の誤解を解くために、わざわざここまで来てくれたのだろうか。

さとみさんは彼の妹。それを知って、泣きそうなくらいうれしい。私は自覚しているよりもずっと彼のことが好きみたいだ。

「……えっと、よければ上がっていきますか?」

私は相良さんに声をかけた。

するとマンションを見上げた彼が眉をひそめる。

「浜名さんの部屋は、四階のあの角部屋でしたよね」

「そうですが……」

「おかしいな。今一瞬電気が点きました」

「え?」

とっさにマンションを振り返るも、私の部屋は真っ暗だ。

彼の見間違いではないのだろうか。

戸締まりはきちんとしたし、窓から侵入するにも高すぎる。

「俺が先に入ってもいいですか?」

「はい……」

四階の共用廊下まで来ると、相良さんは自分の唇に人差し指をあてた。私は無言でうなずく。
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