長すぎた春に、別れを告げたら
穏やかでない空気が流れる中、部屋の鍵を渡してドアを開けてもらった。

一週間以上閉め切っていたので、もわっとした熱気があふれ出してくる。

とはいえ、しんと静まり返った部屋はとくに異変がないようでほっとする。

「すぐにエアコンを入れますね」

そう言ったとき。

「萌歌ー!」

暗闇からいきなり太い腕が伸びてきた。

「きゃあああっ」

すかさず相良さんが私を庇って、不審者を取り押さえる。

「いってえっ」

呻き声を上げたのは、まさかの治久だった。

「治久っ?」

「浜名さん、大丈夫ですか?」

相良さんが私を振り返る。

「はい……。どうして治久が私の部屋に……」

電気を点けると治久は汗だくで、尋常でない雰囲気を纏っていた。

いったいいつからここで私を待ち構えていたのだろう。もし相良さんがいなければと思うと、恐怖で体が震えた。

「警察を……」

「どうしました!? 警察です!」

スマートフォンを手に取ったとき、二人組の警察官が現れた。たまたま別件で下の階に来ていたらしく、上の階が妙に騒がしいと駆けつけたみたいだ。

「不法侵入者です」

相良さんが毅然とした態度で警察官に告げた。
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