長すぎた春に、別れを告げたら
『浜名さんが決めたのなら、それでいいと思います』

相良さんは私の思いを受け止めてくれる。

彼ならきっとそう言ってくれると思っていた。

「はい。落ち着いたらまたご連絡しますね」

笑顔で通話を切った。

私は夢をあきらめない。

胸を張って相良さんと向き合えるように、前に進もう。


そのあとの行動は早かった。

なりたかった職業に就くために、A:ROOMに退職届を提出した。

希帆さんは寂しがってくれ、雫ちゃんはもっと一緒に働きたかったと泣いてくれた。A:ROOMのみんなには感謝の気持ちでいっぱいだ。きっとここでの経験はこれからの人生に役立つだろう。

A:ROOMを正式に辞めるのは一カ月後だけれど、並行して就職活動を始めた。

今のところ、二社受けてどちらからもお祈りメールが届いた。もちろんこれくらいではへこたれない。今日もこれから面接が入っている。

オフィスを出て階段に向かったとき、五階の踊り場に相良さんが現れた。

「相良さん?」

「落ち着いたらまた連絡すると言って、もう二週間が経ちました」

彼は不満をこぼすようにつぶやいた。

「すみません、ばたばたしていて……。わざわざ来てくれたんですか?」

監査業務の訪問日ではないはずだ。

彼はなにも答えない。
< 51 / 54 >

この作品をシェア

pagetop