長すぎた春に、別れを告げたら
「私、就職活動をしてるんです」

「就職活動?」

「はい。本の編集や校正に携わる仕事に就きたいと思っています」

私の決断に、相良さんは少し驚いたように目を見開いた。

「大手の出版社につてがありますが、紹介しましょうか」

「ありがとうございます。でも自分の力でがんばります」

きっぱりと辞退すると、彼は苦笑いする。

「やっぱりあなたは俺を頼らないな」

相良さんはゆっくりと歩み寄り、真正面から私の手を握った。

踊り場の窓から差し込むまばゆい光が私たちを包み込む。

「それでは一番近くで、俺にあなたを見守らせてくれますか?」

「え……?」

「初めて見かけたときから気になっていました。あなたが好きなんです。こんなに誰かを追いかけるのはあなたが初めてだ」

まっすぐな眼差しを注がれて、激情が込み上げる。まさか彼が私を好きでいてくれたなんて。

「私が夢をあきらめたくないと思ったのは、相良さんが好きだからです。胸を張って相良さんと向き合いたいから」

完璧な彼の前で恥ずかしくない自分になりたい。

「好きなら頼れよ。不器用すぎるだろ」

ぶっきらぼうにつぶやかれて、目をぱちぱちさせる。

「でも、いい。そんなあなたが好きだから」

相良さんは私を引き寄せて、とても優しいキスをした。





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