皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
定時後、先にオフィスを出た私は一階のエントランスホールで幸崎さんを待っていた。会社の人と待ち合わせするのは雪以外とは初めてだ。落ち着かなくてそわそわしていると、エレベーターから降りてきた幸崎さんが、手を振りながら近づいてきた。
「佐倉さん、お待たせ。じゃあ行こうか」
「はい!」
仕事中には見ることのない、ほんの少しだけくだけた笑顔に、いつもとは違う距離の近さを感じてしまう。一人ドギマギしていたその時だった。
「あっ幸崎さぁん!先日送ったメール、見ていただけましたかぁ?」
聞き覚えのある、甘ったるい声が背後から聞こえてきた。振り返ると広報課の橘さくらが、幸崎さんの腕に手をかけ、上目遣いで話しかけている。
その光景に、私は思わず息を飲んだ。
「その件はまだ都合がつかなくて」
幸崎さんはすぐに腕から手を外し、少し困ったような表情を浮かべている。
「えー、お忙しいんですね。でも今日は定時退社されるんですか?」
「そうだけど」
「でしたらこれから一緒にご飯でも行きませんか?私、素敵なお店を最近見つけたんですよ!」
「ごめんね、用事があるから」
積極的な誘いを幸崎さんがきっぱりと断ると、橘さくらは一瞬だけ後ろにいる私を睨みつけた。
「用事って……もしかしてそちらの方と?」
視線は研修中と何一つ変わらない、私を値踏みするようなものだった。そのナイフの様な鋭さに私は何も言い返すことができず、たただ固まっているしかなかった。
「彼女と私、同期なんですよ。良かったら三人で……」
「悪いけど、そろそろ時間だから」
魅力的な笑顔を作る橘さくらの言葉を遮るように、幸崎さんは素っ気なくそう言い放つと、私の手を優しく引いた。そして呆然とする橘さくらを残して、私たちは足早にエントランスを後にするのだった。
「佐倉さん、お待たせ。じゃあ行こうか」
「はい!」
仕事中には見ることのない、ほんの少しだけくだけた笑顔に、いつもとは違う距離の近さを感じてしまう。一人ドギマギしていたその時だった。
「あっ幸崎さぁん!先日送ったメール、見ていただけましたかぁ?」
聞き覚えのある、甘ったるい声が背後から聞こえてきた。振り返ると広報課の橘さくらが、幸崎さんの腕に手をかけ、上目遣いで話しかけている。
その光景に、私は思わず息を飲んだ。
「その件はまだ都合がつかなくて」
幸崎さんはすぐに腕から手を外し、少し困ったような表情を浮かべている。
「えー、お忙しいんですね。でも今日は定時退社されるんですか?」
「そうだけど」
「でしたらこれから一緒にご飯でも行きませんか?私、素敵なお店を最近見つけたんですよ!」
「ごめんね、用事があるから」
積極的な誘いを幸崎さんがきっぱりと断ると、橘さくらは一瞬だけ後ろにいる私を睨みつけた。
「用事って……もしかしてそちらの方と?」
視線は研修中と何一つ変わらない、私を値踏みするようなものだった。そのナイフの様な鋭さに私は何も言い返すことができず、たただ固まっているしかなかった。
「彼女と私、同期なんですよ。良かったら三人で……」
「悪いけど、そろそろ時間だから」
魅力的な笑顔を作る橘さくらの言葉を遮るように、幸崎さんは素っ気なくそう言い放つと、私の手を優しく引いた。そして呆然とする橘さくらを残して、私たちは足早にエントランスを後にするのだった。