皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
 時刻は14時30分。提出の30分前に、なんとか作業を終えることができた。
 佐々木さんに手渡すと私が作成した資料を見て、感心したように目を細めた。

「佐倉さん、ありがとう!おかげで間に合ったよ!幸崎さんは優秀な後輩がいていいなぁ。よかったら今度また手伝ってよ」

 その言葉に、胸の中にじんわり達成感が広がっていく。
 
「いえ、お役に立ててよかったです」

 私が謙遜して答えると、背後から聞き覚えのある、少しだけ低くて甘い声が聞こえてきた。

「残念でした。佐倉さんは今、俺専属なので」

 振り返ると、出張から戻ってきたばかりの幸崎さんが立っていた。彼の言葉に、佐々木さんは大袈裟に「ええっ!そんなぁ」と声を上げる。幸崎さんは、そんな彼を横目に、私の方へ歩み寄ってきた。

「お疲れ様。出張でいなくてごめんね。大変だったでしょ」
「い、いえ、そんなことないです。ちょうど手が空いてたので……」
「ふぅん、そっか。でも佐々木は人使いが荒いからね。何か面倒事を言われたら、いつでも相談にのるから遠慮なく声をかけてね」
「幸崎さん、それは酷いですよぉ」

 冗談ぽい口調ながら、幸崎さんの声には、いつもの穏やかさに加えて、ほんの少しの鋭さが含まれている。

「だって佐倉さんは、おれの大事なバディだからね」

 どこか独占欲が滲ませながら、それでも私の評価を自分のことのように喜ぶ彼の表情は誇らしげに輝いている。そんな彼の態度に胸がくすぐったくなる私は、熱くなった頬を押さえて平静を装うので精一杯だった。

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