皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい

玉砕覚悟の告白の行方

 幸崎さんをカフェに誘うのは、勇気のいることだった。

『お話したいことがあるので、お時間いただけますか?』
『もちろん』

 ドキドキしながらメールを打つと、返事はすぐに返ってきた。
 待ち合わせ場所は駅裏のカフェ。心地よいBGMが流れる中、私達は人目につかない奥の席に座った。

「あの、幸崎さん……」

 いざとなると、声が震えて言葉が出ない。幸崎さんは、そんな私を優しく見つめ、静かに次の言葉を待ってくれた。

「ずっと、幸崎さんのことが好きでした。仕事ができて……皆に優しいところが、素敵だなって……」

 決して泣いたりしないように。
 途絶え途絶えになりながら、必死で言葉を紡ぎ出す。それでも顔はだんだん下を向いてしまう。幸崎さんが誰にでも優しいから、私の恋心はきっと届かない。そう思いながらも、この気持ちを伝えたかった。玉砕覚悟の、最後の勇気だった。

「――俺も、佐倉さんのことが好きだよ」

 少しの静寂の後、幸崎さんはそっと私の手の甲に自分の手を重ねた。思ってもみなかった言葉に、私は顔を上げ、幸崎さんをまじまじと見つめた。彼は優しい笑顔で私の目を見つめ返している。

「え……嘘」

 これは夢じゃないのだろうか。一瞬息が止まってしまう。
 
「嘘じゃないよ」

 幸崎さんは励ます様に、呆然とする私の手を握りしめる。

「あの……でも、どうして、私のことが好きなんですか?」

 好きになってもらえた要素が、私のどこにあるのだろう。予想外の展開に、嬉しい反面戸惑いも大きい。私は、思い切って尋ねてみた。

< 29 / 42 >

この作品をシェア

pagetop